活動状況

科研費研究支援事業の中核機関である医科研を文科省が視察
—新学術領域研究・学術研究支援基盤形成「先端モデル動物支援プラットフォーム(AdAMS)」・「コホート・生体試料支援プラットフォーム(CoBiA)」

令和元年7月4日、文部科学省研究振興局学術研究助成課の梶山正司課長、辻山隆課長補佐、米澤温果様、学術機関課の吉居真吾課長補佐、大久保雅史様の5名が、医科学研究所が中核機関となっている「先端モデル動物支援プラットフォーム」(以下、AdAMS)及び「コホート・生体試料支援プラットフォーム」(以下、CoBiA)の拠点を視察された。

はじめに、AdAMSの代表者である井上純一郎教授から冒頭挨拶があり、開会した。井上代表からは視察全体の流れが説明されるとともに、医科研からの出席者が紹介された。山梨裕司所長、村上善則教授、山田泰広教授、醍醐弥太郎特任教授、渡邉俊樹名誉教授、小沢学准教授、上原功研究支援課長が出席し、研究支援課から阿部晃久係長、竹内碧が、学術研究基盤支援室から武居ゆり、齋藤淳、柴田絵梨子が陪席した。

続いて、梶山課長より、文部科学省の皆様のご紹介があり、現場の視察を通じてAdAMSとCoBiAの支援内容や実施体制についてさらに理解を深められたい旨のご挨拶があった。

次に、山梨所長より、本事業の中核機関である医科研の長として挨拶があった。厳しい審査を経た我が国のトップレベル研究である科研費研究課題に対し、最先端の技術およびリソース支援を行う本事業の中核機関として認定されたことへの感謝、ならびに医科研が国際共同利用・共同研究拠点として、国内外にわたり研究者個人間および研究組織間のネットワークを、今後より一層拡大、深化させつつ構築していく、との決意が述べられた。

引き続き、井上代表より、医科研でのAdAMSおよびCoBiAの運営状況について、所長直属オフィスである学術研究基盤支援室が、両PFの研究者による活動の全体運営を、医科研事務部研究支援課と課題全体の経費情報を共有・連携しつつ担っており、研究支援課では他の連携機関の事務部とも連携して配分等の実務を担っている等、説明があった。


井上 学術研究基盤支援室長

山梨 医科研所長

続いて現場の視察に先立ち、各PFから活動内容及び体制について概要が説明された。
はじめに、AdAMSの井上代表と山田教授より説明があった。

井上代表からはまず、中間評価で検討事項として指摘のあった先端モデル動物支援プラットフォームの英語略称の設置について、"Platform of Advanced Animal Model Support"の頭文字から"AdAMS" アダムスと決定し、論文等の謝辞の定型文にこれを含めて記載するよう周知を進めていることが報告された。略称が決定したことに伴いリニューアルしたロゴとその意味の解説があった。こちらも、支援成果の学会発表やリリースの際に使用していただくよう周知していきたい旨説明があった。さらに、AdAMS全体の研究支援の実施体制について説明があり、その中で医科研の中核拠点としての役割の重要性について説明があった。

山田教授は、モデル動物作製支援の全体像について概説し、その中で医科研が先進的遺伝子改変マウス作製支援と遺伝子改変ラット作製支援の拠点として、多様なニーズに応え得る先進技術を駆使したマウス・ラット作製支援を担っていることが説明された。さらに、医科研の動物センターにあるシステム疾患モデル研究センターの胚操作室の様子と、そこに設置されている5台のマイクロインジェクションシステム、蛍光ユニット、ES細胞・iPS細胞培養システムについて解説があった。

AdAMSの説明に対し、梶山課長と辻山課長補佐から、遺伝子改変マウス・ラット作製の複数拠点における技術の違いや設備などについて、熱心な質問をいただいた。


左から辻山課長補佐、梶山課長、吉居課長補佐


左から井上代表、山田教授、小沢准教授

続いて、CoBiAの村上代表より説明があった。

まず、本PFが健常人コホートJ-MICCを中心とする「コホートによるバイオリソース支援」、脳バンクネットワークを中心とする「ブレインリソースによる支援」、並びにがんを始めとする生体試料と最先端解析技術の両方を提供する「生体試料による支援」の3つの支援活動を統合して、生命医科学研究がヒト生体試料研究へとパラダイムシフトを起こす中で、科研費受給者のための貴重なコアラボラトリーとしての役割を果たしていることが、最近3年間の支援実績とともに紹介された。そして、医科研がH22年度以来認定され、高い評価を受けている共同利用・共同研究拠点事業、H30年度から新たに生命医科学領域で唯一認定された国際共同利用・共同研究拠点事業の経験を十分に活かして、本PF中核拠点として活動していることが報告された。また、バイオバンク・ジャパン等、他のバンク活動との連携の取組みが紹介された。さらに、医科研が中心拠点となっている生体試料支援活動について、ヒト生体試料の最先端解析技術支援の実態と意義、また試料の収集・保管・提供のノーハウと展望について説明がなされた。

CoBiAの説明に対し、梶山課長と辻山課長補佐から、収集される生体試料の内容や、本PFと他のバンクとの相違点(目的や支援を受ける研究者の対象等)などについて、国全体での体制という視点からの質問をいただいた。


辻山課長補佐


左から渡邉名誉教授、醍醐特任教授、村上代表

 

こののち、実際の支援活動が行われている現場の視察に向かった。

まず、CoBiAで生体試料による支援活動の班長である醍醐特任教授から支援実施体制のより具体的な説明があった。抗体・ワクチンセンター試料保管室にて保管試料や細胞モニタリング画像を、主実験室にて検体管理システムや各種解析支援、免疫染色装置やその画像保管・管理システムを、機器室では次世代シークエンサー等を、細胞実験室では生体分子の機能検証支援の様子が紹介された。


主実験室

細胞実験室

次に、バンク連携活動として、バイオバンク・ジャパンの血清倉庫を視察された。


バイオバンク・ジャパン 血清倉庫

続いて、AdAMSのモデル動物作製支援活動の拠点である、山田教授の先進病態モデル研究分野の培養室にて、ES細胞培養の様子や、病理・解剖室では作製されたマウスの紹介があった。


培養室

病理・解剖室

視察後には会議室に戻り、梶山課長より所感が述べられた。その中で、人・研究費・研究環境のいずれもが共用化を高めていくことが求められるなか、新学術領域研究『学術研究支援基盤形成』事業としての「先端モデル動物支援プラットフォーム」(AdAMS)及び「コホート・生体試料支援プラットフォーム」(CoBiA)が形成する研究支援基盤の重要性を、改めて示唆された。

(文責:学術研究基盤支援室コーディネータ 武居ゆり)